2010年5月7日金曜日

ヘッドホンアンプ: 電源・熱設計

消費電流
電源の検討に先立ち、使用するデバイスのデータシートを参考に消費電流を検討してみました。

  • デジタル系電源 180mA
  • アナログ系電源 100mA(無信号時)、250mA(負荷接続時、最大電流)

電源回路
お気楽オーディオキット資料館で頒布されている電源基板を使用しました。やや形状が大きいですが、拡張性もあり、しかも基板の品質も良くお手軽です。アナログ用±12Vには、正負出力定電圧電源基板(TYPE-D)。デジタル用+5Vには、正出力定電圧電源基板(TYPE-E)を利用させてもらいました。このほか、トランスも頒布品のフェニックス社製Rコアトランス RA40-144です。
なお、この基板で採用されている電力用トランジスタTIP31C/TIP32CDigi-Keyで、ヒートシンクPUG56-30(水谷電機工業)は共立エレショップで入手しました。


電源の熱設計
以前のFMチューナの電源設計では、放熱の見込みが甘くかなり熱かったので、今回はもう少し見直す事にしました。考え方は同じですが、計算用Excelシートを作成して、簡単に検討できるようにしました。

電源の定数検討



ヘッドホンアンプTPA6120A2の熱設計
(1)発生する熱

TPA6120A2の出力電力を変化させたときの電力損失のグラフによると、同じ出力電力で比較するとき、電力損失は電源電圧に比例し、負荷抵抗に反比例しています。想定される出力電力からTPA6120A2で消費される電力を求め、必要なヒートシンクのサイズを検討します。
 以前のヘッドホン出力レベルの検討で、いくつかのヘッドホンのうち最も消費電力の大きなAKG K701は、12.7mW(62Ω)が必要でした。ここで、想定される最大出力として、さらに10dBの余裕を見込むと、12.7mW×10≒0.13Wとなります電力損失は、データシートのグラフより 0.65W(電源電圧±12V)になります。これはモノラル時の出力ですからトータルで1.3Wの電力損失を見込みます。


 TPA6120A2の電力損失(データシートより)

(2)PowerPAD

TPA6120A2には、チップ裏面にPowerPADと呼ばれる放熱用パッドが露出しています。この取り扱いについては、SLMA002E PowerPAD Thermally Enhanced Package Application Report を参照するよう指示があります。見慣れない文書なので、なかなか意味が取れませんが・・・


 PowerPADの正しいマウント方法(アプリケーションレポートより)


このレポートには、プリント基板にビアを打ったり、内層のパターンも活用して放熱せよということが書いてある見たいです。しかし、作れる基板は片面基板なので、基板のパターンでの放熱は余り期待できそうにもありません。


データシートに記載された熱設計に関するパラメータ
Tj: ジャンクション温度 最大値150℃
ΘJA: ジャンクションから周囲に対する熱抵抗 44.4℃/W
ΘJC: ジャンクションからケースに対する熱抵抗 33.8℃/W

(3)ヒートシンクなしの場合
最高周囲温度40℃を想定するとき、のジャンクション温度は 40℃ + 44.4℃/W×1.3W = 98℃ となります。ケース温度は 40℃ + 33.8℃/W×1.3W = 84℃ となります。ケースは触れないくらい熱くなります。そのため、PowerPADにヒートシンクを取り付けることを考えてみます。


(4)銅板の熱抵抗
まずPowerPADとヒートシンクの間の熱抵抗を考えます。実装の都合でPowerPADに薄い銅板をはんだ付けして、その銅板にヒートシンクを取り付けることを考えています。
銅板の熱抵抗による温度勾配は、熱伝導率から求められます。Wikipediaによると、銅の熱伝導率λは398です。

 
  熱伝導率

但し、電力W [W]、面積S [㎡]、長さl [m]、温度勾配 k [℃]。
また、この式を変形して温度勾配を求めてみます。
  
  温度勾配(温度上昇)

使用する銅板サイズを幅1cm、厚み0.1mm、長さ5mmとすると、温度勾配は次の通り。


温度勾配k = 1.3 ・ 5×10^-3 / { 398 ・ (1×10^-2 ・ 0.1×10^-3) } = 16.3 [℃]



(3)ヒートシンクつきの場合
秋月電子のアルミ製小型ヒートシンク(56mm×17mm×20mm)を想定します。この製品の熱抵抗は不明ですが、水谷電機工業PUE56に形状が似ているので類推してみます。PUE56の高さは30mm、熱抵抗は7.39 [K/W] です。一方、秋月電子の高さは20mmで表面積が2/3になると考えれば、熱抵抗は7.39×(3/2) = 11 [K/W] と類推されます。

ここで、TPA6120A2のアプリケーションレポートによるとジャンクションからPowerPADへの熱抵抗は 0.37℃/W(DWP20パッケージ)なので、ジャンクション温度は 40℃ + 16.3℃ + (0.37℃/W + 11℃/W) × 1.3W = 71℃となります。また、ヒートシンクの温度は 40 + 11*1.3 = 約54℃ になりそうです。


2010.5.11追記
PowerPADとヒートシンクの熱結合をうまくできるのか不安視しています。そこで発熱を分散させるために、TPA6120A2をモノラル使用に変更することにしました。使用ししない片側のチャンネルを停止させれば、そのぶん発熱が減ります。

ジャンクション温度は、40℃ + 16.3℃/2 + (0.37℃/W + 11℃/W) × 1.3W = 63℃、ヒートシンクの温度は 40 + 11*1.3 = 約54℃のまま変わらない、と考えてますが合ってるかな。

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