2012年2月26日日曜日

中波受信用ループアンテナ その16(巻いてみた)

とりあえず仮組み。構造上仕方のないことですが電線管は円形にならずひしゃげた形となり、格好良いとは言い難いです。エレメントとして使う同軸ケーブルはフジクラ5D-2Vを選びました。テレビ用の同軸ケーブルは、編組の銅線が少な目なのではと先入観があったことが理由です。(実際にどうなのかは検証していません)
写真のものは、短辺方向が直径52センチ、長辺方向が58センチです。巻き数は6回で、それ以上はちょっとムリのようです。


次に、エレメントのみの単体特性です。まず自己共振点が2.75MHzになっています。以前の記事で4回巻から2回巻に変更して実験していたのに見事に忘れていました。インピーダンス測定値で抵抗分の指示値がマイナスになったりしていますが、これは測定系の問題なので無視して下さい。最後のインダクタンス値は、自己共振点に近づく(周波数が高くなる)につれて増加していることが読み取れます。インダクタンス値が受信帯域内で変化していると、厳密にはラジオの受信音質に影響すると思っています。今回は600kHz~800kHzで使用するので良くはないけれどダメでもないかと自分に言い聞かせて、(修正が面倒なので)このまま進めてみます。



2012年2月23日木曜日

中波受信用ループアンテナ その15(PF管を巻き枠に)

このところ机上検討ばかりで飽きてきたので何かしら手を動かすことにしました。
これまでの検討で、自分の中で概略の方向性は固まってきています。


想定プラン

・屋外設置で直径は50センチ。
・風で飛んでいったり部品落下が心配なので軒下にぶら下げて設置する。軒下とはいえ、雨をかぶったり直射日光に当たるので耐候性にも少しは留意し、10年程度は使えるものにしたい(願望)。
・シールドループアンテナは、何かと制約が多いのであきらめ。コモンモードフィルタを使えば、若干の効果があると期待。
・アンテナエレメントには、それなりに太さがあって安く買える5Cクラスの同軸ケーブル外皮を使用する。金属パイプを使うと格好は良いが、完成できない予感がするので今は見送り。
・巻数は4~8回を目標にする。
・同調型のループアンテナでNHK第一専用、できればAFNも聞きたい。もちろんパッシブ型。
・アンテナエレメントの巻き枠としてフレキシブル電線管を使い、風で曲がらない程度に丈夫なものとする。


材料探し

近所のホームセンターでは電材が少なく、遠くのスーパービバホームまで足を伸ばすことにしました。品揃え良くて楽しいです。
ちょうど内径28mmのパナソニックのPF管があったので買ってきました。ただ色がイマイチ、ネズミ色です。整合回路を入れるケースには、未来工業プルボックスPVPとしました。




何回巻けるか

電線管の中に同軸ケーブルを通すだけなので、巻けるだけ巻くというのもひとつの答えですが一応計算してみます。電線の占有率は何かに規定があったよなと調べてみたら、内線規定に書いてあるそうで普通は32%、管の屈曲が少なく容易に電線を引き入れ引き替えができれば48%だそうです。このループアンテナの場合は、曲がりがキツイので本来なら32%をめどに考えるべきでしょう。

電線管の断面積は615m㎡、同軸ケーブルの外径は7.4mmなので断面積は43m㎡。占有率を32%とすれば4.6本、48%でみれば6.8本。頑張って6回巻ければ良いかなというところです。あとはやってから考えましょう。

2012年2月12日日曜日

中波受信用ループアンテナ その14(アンテナファクタ・アンテナ係数)

電界強度の測定では、アンテナの受信電圧から電界強度に換算することが良く行われています。換算用の係数をアンテナ係数(アンテナファクタ;Antenna Factor)といいます。測定用アンテナの仕様書には、この係数値が書かれています。(リンク先の資料で変換係数がそれに類するものです)


ループアンテナのアンテナファクタ

これまでの検討で、受信電力の簡易予測式を導きましたがアンテナファクタのほうが実践的ですので、これで検討を進めます。
本来のアンテナファクタ値は、アンテナの利得、整合回路損失、不整合による損失、測定ケーブルの損失など諸々含めての係数値です。今回の検討ではループアンテナの形状を選定するために潜在的(理論的)な能力比較を行うため、ループアンテナそのものに着目し、かつ無損失で整合できると仮定した場合のものですから本来の”アンテナファクタ”とは異なることに注意して下さい。

受信電力と電界強度の関係は次の通りです。但し、受信電力P、比例定数k、電界強度E、(終端)負荷電圧V、負荷抵抗R。


次に、アンテナファクタAFは電界強度を受信電圧で割った値です。


上式の対数を取ると次のようになります。


電界強度と負荷電圧値の関係は負荷抵抗が50Ωのとき次の通りです。但し、電界強度E [dBμV/m]、終端受信電圧V [dBm]、アンテナファクタAF [dB]。




アンテナファクタの試算

ループアンテナエレメントの線種を変えたときのアンテナファクタを試算してみました。試算では、屋外アンテナを想定して直径50センチとしています。アンテナファクタは、数値が小さいかマイナスの方がより高い受信電力が得られます。
この結果を見ると、当初試作をした3C-2VS同軸ケーブルの芯線を使ったもののアンテナファクタは0.6MHzで31.2dBと思わしくないことがわかります。幅広のアルミ平板では、少ない巻き数で良い結果が得られることが期待できるものの実際に作るとなると構造的に一工夫必要です。

今回の試算は、細い電線で巻き数を増やすより、少ない巻き数の幅広銅板のほうが良いものを作れる可能性があるのでは?という発想から始まりました。幅広銅板(幅5センチ・2回巻)は、8D-2V(2回巻)より4dB弱優れていますが、作りやすさやコスト面を考えると、月並みですが5Cや8Dクラスの同軸ケーブル外皮を使うのが現実的になのかなと思っています。

2012年2月1日水曜日

中波受信用ループアンテナ その13(バーアンテナの利得・実効高)

バーアンテナの実効高(利得)

ポータブルラジオによく使われるバーアンテナの実効高について考えてみました。


写真のバーアンテナは、手持ちで最も大きく高性能そうに見えるもので、実測で次のような特性を持っています。

・フェライトバー: 直径1cm、長さ15cm
・中波ラジオ用巻線(右側): 75回巻、直流抵抗値1.23Ω
・インダクタンス: フェライトありのとき384μH、フェライトなしのとき23μH

インダクタンスは、フェライトバーの実効比透磁率の分だけ大きくなるので実効比透磁率μeは、384÷23 ≒ 16.7 であることがわかります。
フェライトバーアンテナもループアンテナの一種で、ループアンテナの見かけの面積はフェライトバーの比透磁率の分だけ大きくなりますから実効高は次のようになります。但し、実効高h [m]、実効比透磁率μe、ループアンテナ面積A [㎡]、ループ巻数N [回]、波長λ [m]


上式を使うと、バーアンテナと実効高が等しいループアンテナの大きさを計算できます。波長が同じなら、分子のμe×A×Nの積が等しければ 実効高が等しくなります。

バーアンテナは、μe×A×N = 16.7×(π×0.005^2)×75 = 0.098 [㎡] です。
そして1回巻のループアンテナなら、比透磁率は 1 なので、ループ面積0.098㎡に相当します。
ループ面積0.098㎡は、直径35センチ相当なのでフェライトバーを使うことでかなりの小型化ができていることがわかります。ただ、実効高が同じでも直流抵抗値が大きく、しかも中波帯域では表皮効果の影響も受けるため放射効率の面で不利なことが予測できます。



参考資料

NDXC名古屋DXersサークル - 中波用フェライトバーアンテナの製作