2012年12月31日月曜日

2012年を振り返る

今年もブログをご覧いただき、ありがとうございました


今年の成果

・ループアンテナの実験
理論式を交えてなんとなく理解できた気分になれました。見てくれはちょっと無骨ですが毎日使っています。



・FPGA FMトランスミッタ
作りかけの基板にソフトを書き込んで単体動作の確認まではできました。次に、操作パネルのAVRマイコンと連携して液晶表示やら設定変更を行うところに着手するところで頓挫しています。この工作の目的がデジタル処理でFMトランスミッタを作ることだったため、使い勝手の改善まで正直手が回らないといった事情があります。それに本体基板の限界点もわかってきました。



・Radio Mobileで電波伝搬シミュレーション
電波伝搬シミュレーションができるフリーソフトの存在を知って驚きました。しかもかなりの多機能。操作性にはかなりクセがありますが、性能には定評があるようです。


©OpenStreetMap contributors

来年の目標

・プリント基板の外注
これまでプリント基板を自作してきましたが、両面基板でスルーホールが作りにくいことと、歩止まりを考えて低廉なプリント基板製造会社に頼んでみたいと思っています。基板CADも DesignSpark PCB に変更して今風?な EDA 環境を体験してみたいですね。

・FPGAを使ったデジタル信号処理
FMトランスミッタ以外にも広げてみたいと思っています。題材を探しています。無謀な目標はありますが、現実的なところで基礎固めをしてみたいです。
検索キーワード

  1. cdプレーヤー 音飛び
  2. qfn はんだ付け
  3. はんだごて 温度
  4. オーディオアナライザ
  5. nd-s1000
  6. degen de1103
  7. si570
  8. cd-83p
  9. lpro-101
  10. tpa6120a2
上には記載していませんが春頃から検索キーワード「不明」のアクセスがかなり増えてきました。これは、 Google の仕様変更に伴い検索結果ページが SSL 化されてしまったことによるものです。


トラフィック
訪問者数 約40,500、1日あたり111でした。昨年比で横ばいですね。


2012年12月17日月曜日

ジャンクGPSモジュールを動かしてみる

夏のハムフェアで購入したジャンク GPS モジュールを動かしてみました。
古野電気製で GN-7909B と書いてあります。どうやら OEM 向けらしく型番でググってもヒットしませんでしたが、"furuno gn-79 pdf" というキーワードで類似品 GN-79N のデータシートを見つけることができました。

今回の主要な実験アイテム

このモジュールは、組み込み用のためアンテナ接続用の SMB コネクタが付いています。ところが SMB 用の変換コネクタは一般的ではないらしく入手出来ません。そこで別のコネクタに取り替えようかと思っていたところ、ジャンク箱から SMB / SMA コネクタの付いたコードを見つけ、変換コネクタ代わりに使うことにしました。GPS 機器には見慣れないコネクタが使われている印象なので、コネクタの名前と写真をメモ代わりに残しておきます。

貴重な(?) SMB / SMA コネクタ付きコード

SMB コネクタ(プラグ)のアップ

SMB コネクタ(ジャック)

SMB コネクタ(ジャック)のアップ

次に Trimble 製 GPSアンテナのコネクタです。 SMB によく似ていますが MCX コネクタです。

MCX コネクタ(プラグ)

MCX コネクタ(プラグ)のアップ

もうひとつ MCX-J/SMA-J の変換コネクタです。aitendo で激安品を購入しました。わずか300円。特性はともかく、まあ動けば良いかと。

MCX-J/SMA-J 変換コネクタ

MCX-J コネクタ側

SMA-J コネクタ側

モジュールにはシリアル出力が付いており5V電源で動作するので、秋月のUSB-シリアル変換モジュールでPCと接続してみます。電源はUSBから給電します。

実験風景

ユニバーサル基板で組み上げ

動作確認には、GPSInfo というソフトを使用しました。このソフトでは、衛星を補足すると衛星マークがオレンジ色に変わりますが、ご覧の通り灰色のまま。コールドスタートでは、GPS衛星の捕捉まで時間がかかるのかと思い1時間ほど放置しましたが状況はかわらず。ところが測位情報のうち緯度経度だけは適切な表示がでました。標高は微妙に正しくないです。





次に、GPSモジュールが出力するNMEA-0183というプロトコルのログデータです。ネットに転がっていたPDFではシリアルスピード4800bpsとありましたが、9600bpsで接続できました。

$GPDTM,W84,,00.0000,N,00.0000,W,,W84*53
$GPGGA,035609,????.????,N,?????.????,E,1,04,05.04,000004.1,M,0040.3,M,,*70
$GPZDA,035610,16,12,2012,+00,00*67
$GPGSV,3,1,09,02,35,308,29,04,71,015,45,05,15,250,33,07,05,125,31*71
$GPGSV,3,2,09,10,67,288,33,12,11,292,33,13,51,077,49,17,46,173,43*74
$GPGSV,3,3,09,23,27,047,47*44
$GPVTG,004.5,T,011.6,M,000.1,N,0000.2,K,A*17


$GPDTM GPS情報?
$GPDTM, W84, , 00.0000, N, 00.0000, W, , W84*53

1. 測地系 W84: WGS84 世界測地系
3-4. 緯度 00.0000, N: 北緯 0度
5-6. 経度 00.0000, W: 西経 0度

GPDTM (GN-79Nデータシートより)


$GPGGA 位置・時間等についての情報
$GPGGA,035609,????.????,N,?????.????,E,1,04,05.04,000004.1,M,0040.3,M,,*70

1. UTC 時間 035609: 03時56分09秒
2-3. 緯度 ????.????,N: 北緯 ????.????
4-5、経度 ?????.????,E:: 東経 ?????.????
6. GPS 品位 1: GPS 測位有効(0: GPS測位無効、2: DGPS測位)
7. 測位に使用した衛星の数 04: 4個
8. DOP(Dilution of precision; 精度低下率): 05.04
  2D: HDOP(horizontal dilution of precision) 水平精度低下率 
  3D: PDOP(position dilution of precision) 位置精度低下率 
   ※数字が小さいほど精度が良いそうです
9. 標高 000004.1: 4.1
10. 標高の単位 M: メートル
11. ジオイド高 0040.3: 40.3
12. ジオイド高の単位 M: メートル

13. DGPS補正歴: DGPSが使われていないときは空白
14. DGPSのステーションID: DGPSが使われていないときは空白
15. チェックサム *70: 70

GPGGA (GN-79Nデータシートより)


$GPZDA 時刻情報
$GPZDA,035610,16,12,2012,+00,00*67

1. UTC時間 035610: 03時56分10秒
2. 日 16: 16日
3. 月 12: 12日
4. 年 2012: 2012年
5. 時差(時) +00:: (UTCに対する)時差 0時間
6. 時差(分) 00:: (UTCに対する)時差 0分
7. チェックサム *67: 67

GPZDA (GN-79Nデータシートより)



$GPGSV 衛星情報
$GPGSV,3,1,09,02,35,308,29,04,71,015,45,05,15,250,33,07,05,125,31*71

1. メッセージ数 3: 3個
2. メッセージ番号 1: 1番
3. 上空の衛星数(仰角5度以上) 09: 9個
4. 測位に使用する1個目の SV番号(Space Vehicle;衛星) 02: 2
5. 測位に使用する1個目の 衛星の仰角 35: 35度
6. 測位に使用する1個目の 衛星の方位角 308: 308度
7. 測位に使用する1個目の 衛星のSNR(C/N) 29: 29dB Hz
8-11. 測位に使用する2個目の衛星情報
12-15. 測位に使用する3個目の衛星情報
16-19. 測位に使用する4個目の衛星情報
20. チェックサム *71: 71

GPGSV (GN-79Nデータシートより)


$GPVTG 進行方向と対地速度
$GPVTG,004.5,T,011.6,M,000.1,N,0000.2,K,A*17

1-2. 進行方向 004.5, T: 真北を基準に4.5度
3-4. 進行方向 011.6,M: 磁北を基準に11.6度
5-6. 対地速度 000.1,N: 0.1ノット(海里/時)
7-8. 対地速度 0000.2,K: 0.2km/時
9. ナビゲーションモード A: 自立測位(D: ディファレンシャル、N: 無効)
10. チェックサム *17: 17

GPVTG (GN-79Nデータシートより)


参考リンク
有限会社αエンジニアリング - GPS用語集


2012年11月29日木曜日

Radio Mobileで電波伝搬シミュレーション その3(地図と重ね合わせる)

©OpenStreetMap contributors

大まかな手順としては、(1)Mapの作成、(2)電界強度シミュレーション実行、(3)地図画像を読み込み、(4)シミュレーション結果と地図画像をMerge 重ね合わせ、のようにします。


Map(地形図)の作成
詳細は前回の記事を見て頂くとして、モノクロ地図にした方が見やすい成果物ができあがることがわかりました。
Step 1の地形図作成後に Picture properties を開きます。アイコンをクリックするか、File → Picture properties を選びます。


Draw mode を Gray scaled slope として、Draw をクリックするとモノクロ地形図ができあがります。





電界強度シミュレーション
Step 2~4 を行うと、モノクロ地形図にカラーのシミュレーション結果を重ねた画像ができます。Plot の設定次第で見栄えが変わるので試行錯誤してみます。



ついでに距離のスケールも追加します。Edit → Draw rings... で設定画面を呼び出します。




地図画像の取得 OpenStreetMap
シミュレーション結果と地図画像を重ね合わせるには、シミュレーションで使った Map と同じ縮尺、ピクセル数の地図画像が必要です。この例では、OpenStreetMap のページを開きます。Google Chrome では エクスポート操作がうまくできなかったので IE を使いました。

©OpenStreetMap contributors

エクスポートで、地図画像をダウンロードできます。画面上で指定できる緯度経度の桁数は地図の縮尺で決まりますので、なるべくズーム状態で指定した方がよいです。縮尺はデフォルトでよくわからない数値がでますが、所要のピクセル数になるよう電卓を叩いて調整します。この例では、365937 をセットしたところ 1600×1200 ピクセルに調節できました。


地図の範囲指定を簡単にするためエクセルで簡単な計算シートを作りました。距離を緯度に変換する計算は、緯度1’= 1海里 = 1,852m であることを利用しています。また経度1’あたりの距離は、簡単のために 1,852m×cos(緯度) と見なしました。


©OpenStreetMap contributors


地図画像を Radio Mobile で取り込む
画像ファイルを読み込むだけでは、取り扱うことができません。画像の属性として dat ファイルを作成します。これに気付くまで無駄な時間を費やしました。



地図の緯度経度、縦方向のサイズ(距離)をセットし、dat ファイルを保存します。





地図画像とシミュレーション結果を重ね合わせる
画像ファイルを読み込むだけでは、取り扱うことができません。画像の属性として dat ファイルを作成します。



©OpenStreetMap contributors

地図と重ね合わせた画像です。見通し図も表示させてみました。
工夫次第でもっとキレイに作れると思いますが、今日はここまで。

©OpenStreetMap contributors


参考リンク
Radio Mobile - RF propagation simulation software

2012年11月18日日曜日

Radio Mobileで電波伝搬シミュレーション その2(使い方)

シミュレーションしてみる

ここでは、架空のコミュニティ放送局「FMみなとみらい」を題材として、シミュレーションしてみましょう。送信所は横浜ランドマークタワー屋上、東京タワー並のロケーションで電波を出すとどうなるかを妄想してみます。
Radio Mobileは、受信場所も指定しないとシミュレーションできない仕様なので受信場所も仮に決めておきます。

送信所の諸元
・送信場所: 横浜市西区 横浜ランドマークタワー屋上
        北緯35度27分16秒 東経139度37分53秒
・送信アンテナ海抜高: 310.3m
        標高 4.3m (標高がわかるWeb地図 より)
        建物の高さ 296m
        送信アンテナポール高さ 10m
・送信周波数: 89MHz
・送信機出力: 20W (43dBm)
・送信アンテナ: ターンスタイルアンテナ 1段
・送信アンテナ利得: -1dBi
・送信偏波面: 水平偏波
・送信ケーブル: 10D-2V 15m (ケーブル損失 0.5dB)

受信場所の諸元
・受信場所: 横浜市西区 野毛山動物園
        北緯35度26分50秒 東経139度37分22秒
・送信アンテナ海抜高: 38.3m
        標高 34.3m
        受信アンテナ地上高 4m
・受信アンテナ: ダイポールアンテナ
・受信アンテナ利得: 2.15dBi
・受信偏波面: 水平偏波
・受信ケーブル: 5D-2V 10m (ケーブル損失 0.8dB)

・受信機の所要最小入力 -100dBm (S/N 30dB感度)
  ※ARIB TR-B11 FM放送評価用受信機における設計マニュアルを参考とした


Step 1
まずはMap(地図)を作成します。左端のアイコンをクリックするか、File → New networksを選ぶ。



現在の画面をクリアするか聞いてくるので はい を選ぶ。


これはデフォルトのまま、OKを選ぶ。
次に 左から8番目のアイコンをクリックするか、F8キーまたは File → Map properties を選ぶ。


Enter LAT LON or QRAをクリックすると、座標設定画面が出るので送信場所のLatitude(緯度)とLongitude(経度)をセットして OK する。



元の画面に戻り 地図の範囲(km)と画像サイズ(pixel)を指定して、Extract をクリックすると、送信場所を中心とした地形図画像が作成されます。(下図は、東京湾と相模湾です)



Step 2
Units(地点)登録をします。左から5番目のアイコンをクリックするか、File → Unit properties を選ぶ。最低2カ所を登録します。



次に、送信所と受信場所の地点設定をして行きます。Unit 1, Unit 2 ... の名称を適宜修正、Enter LAT LON or QRAをクリックして緯度経度を入れます。すると、Elevation(標高)が自動で出ますがSRTM-3のデータは精度が高くないため手入力するほうが良さそうです。
画面下のスクロールバーで地点アイコンのデザインを変えられます。




Step 3
Networks properties設定(周波数や出力など送受間の回線設定)をします。左から4番目のアイコンをクリックするか、、File → Networks properties を選ぶ。



Parameters を編集します。Net name に任意の名前を付けます。ここでは、FM MinatoMirai としました。周波数は89MHzですのでMinimum frequency、Maximum frequencyともに同じとします。Polarization 送信偏波面は、Horizontal 水平偏波を選びます。
Mode of variability は Broadcast。% of time、% of locations、% of situations は既定のまま。
Surface refractivity 大気の屈折率、Ground conductivity 大地の導電率、Relative ground permittivity 大地の比誘電率は既定のまま。
Climate は Continental temperate を選択します。


Topology は既定のまま。


Systems で、送信所と受信場所の設備仕様を登録します。system の名前は適当に決めます。
放送の場合は、送信所からしか電波を出しませんが、このソフトは、基地局と移動局間や移動局間での無線通信を想定しているため Transmit power 送信電力 と Receiver threshold 受信限界電力を指定する画面があります。Antenna type には、ターンスタイルアンテナがないので便宜上 omni.ant(無指向性)を選びました。これはもちろんカスタマイズ可能です。
エリア図は受信場所の地上高で計算しているようです。



Membership で、送信と受信場所にチェックマークを入れて、ネットワークに登録します。




Step 4
いよいよシミュレーションを行います。
アイコンをクリックするか、Tools → Radio coverage → Single polar を選びます。



Center unit に送信所、Mobile unit に受信場所、Network にStep 3で作成したネットワークを指定します。Link Direction は Center Tx - Mobile Rx。Radial range は計算する半径なので適宜設定します。Azimuth range は計算する角度範囲で、0度から360度まで0.2度ステップとしました。細かくすると時間が計算に時間がかかります。
Plot でシミュレーション結果の塗り分け、Threshold で計算結果の単位や表現範囲を指定できるので画像が見やすくなるよう適宜調節します。


Draw をクリックし、シミュレーションが終わると次のダイアログが出ます。そのまま OK を選びます。


シミュレーション結果です。東京湾は見通しなので電界強度は距離のみで決まることがわかります。


次の画像はシミュレーション結果を重ね合わせる前の地形画像です。




Step 5
ファイルの保存方法は次の通り。Networks の保存は、File → Save Networks。作成した map データの保存は、File → Save map as。シミュレーション結果画像の保存は、File → Save picture as。


次は、地図との重ね合わせを考えてみましょう。