2009年11月28日土曜日

地デジ測定器を動かしてみる(4)

 中国では地デジのことを『数字電視地面広播』というそうです。そのまんまですね。

 さて、OFDM変調器の出力周波数は37.15MHzでしたがUHF TV帯へのアップコンバータがないので、代わりにR&Kのダブルバランスドミキサと信号発生器で周波数変換を行います。今回は空きチャンネルということで62chとしました。



ダブルバランスドミキサ

 62chは、764~770MHzの幅を持ち中心周波数は767MHzです。地デジの中心周波数は1/7 MHzのオフセットが掛けられているので、767.142857MHzとなります。Web上で地デジの中心周波数を調べられるサイトがあるので利用させて頂きました。
 先に紹介したとおりIF信号のスペクトラムは反転しているので、周波数変換の過程でスペクトラムが反転するように局部発振器LOは逆へテロダインとなるような周波数関係にセットします。

 LO= 37.15MHz + 767.142857MHz = 804.292857MHz


チャンネルパワー

 OFDM信号は約5.7MHzもの周波数帯幅を持っているので、スペクトラムアナライザのチャンネルパワー測定機能でレベルを確認します。スペクトラム表示では、周波数帯幅の約1/100となるRBW=50kHzで観測しているので約20dB低く表示されています。



テレビで入力レベルを確認

 ビクター製のテレビですが取説にはアンテナ入力レベルの記載がありませんでした。そこでパナソニックの単体地デジチューナTU-MHD500の仕様を参考にしようと調べたところ、-75dBm(標準)~-20dBm(75Ω )ということでした。画面では62chで受信されていることがわかります。



チャンネルスキャン

 チャンネルスキャンを行うと、放送局名が表示され受信できるようになります。



放送局を変更すると受信できず

 いったん放送局を受信できている状態で、別の放送局のTS信号に変更したところです。送信チャンネルや変調パラメータは同じなのに受信できなくなってしまいます。リモコン番号に矛盾が出るからなのか、放送局を変更したときは再度チャンネルスキャンをしないと受信できません。


 続いて、OFDM変調器のセグメント毎にキャリアをオン/オフできる測定器ならではの機能を使ってみます。地デジの電波は13個のセグメントから構成されていて、中央の1セグメントはワンセグ向け、残りの12セグメントはHDTVなどの固定受信向けのサービスに使われています。試しに固定受信向けのセグメント1個をオフにしてみたところ、切替ショックもなくテレビで映像が受信できることに気がつき驚きました。さらにもう1個、合計2個のオフにしたときは、セグメントの組み合わせによって受信できる場合と受信できない場合がありました。



セグメントの組み合わせ

 上の図で、数字はセグメント番号を示しています。合計2個のセグメントをオフにしても映像が受信できる組み合わせをオレンジ色に塗ってあります。 



合計3個のセグメントをオフにしてみた

 上のスペクトラムは、ワンセグと固定受信2個のセグメントをオフにしたところです。これでもテレビでは違和感なく映像が出ています。セグメントをオフにしても何故映像が出るのか考えたのですが、固定受信の12セグメントのうち10セグメントだけで映像がみられると言うことは、まず伝送容量が83%になってもビタビ復号(符号化率3/4)とリードソロモン符号による誤り訂正で復号できたということだと思います。とはいえビットレートに余裕はないので、セグメント間インターリーブがランダムに行われている訳ではないので、セグメントの組み合わせによって影響度に差が出たのかなぁと思っています。
(・・・と説明してますが、どうもムリがあるような??)


(参考資料)

2009年11月27日金曜日

地デジ測定器を動かしてみる(3)

地デジOFDM変調器 BT-3901

 なんとケンウッド製です。同社は当該製品ごとリーダー電子に事業譲渡してしまったようですが、モデルが古く両社のWebページを検索しても一切資料が残っていません。マニュアルがありませんが幸いメニューがシンプルでわかりやすいので動作させることができました。しかし筐体が大きく、ミドルタワー型PCとほぼ同じサイズです。

 変調信号は内部の PN信号(PRBS信号; 擬似ランダムビット列)あるいは外部入力の放送TS信号を変調できます。内部のPN信号で変調をかけるときは、任意の変調パラメータを設定することができますが、外部入力の放送TS信号では変調パラメータはTMCC情報により自動設定されるので変更できなくなっています。

 OFDM信号の出力周波数(中心周波数)は37.15MHz。送信機のIF周波数。IF出力信号のスペクトラムは、放送波帯のそれとは反転しているので注意が必要。IFでの高域側が放送波帯での低域側になる。

OFDM変調器メイン画面

 外部変調の場合、変調パラメータは自動設定される。


OFDM変調器FEC設定

 各項目を"On"以外に設定すると映像が出ない。


OFDM変調器 変調設定

 出力としてOFDM信号かCW信号を選択できる。"IQ Swap"は、高周波段での内部処理でI信号とQ信号を入れ替えることができるオプション?位相が変わる?"On"にしないと映像が出ない。"Segment"で任意のセグメントを出力させるかしないかを選択できる。


OFDM変調器 システム設定1

 外部変調にするときは"TS Source"を"EXT"とする。ここでは地デジチューナとDVB-ASIインターフェースで接続しているので"TS Input"は"ASI"とする。放送TSなので"Packet Size"は"204"バイト。あれ、188バイトの表示があると言うことはMPEG2-TSでも入力できるのか?信号源がないので検証できず。
 どうもよくわからないクロック関係の設定。放送TSを接続するときはフレーム同期を取る必要があるはず。でも現実にはDVB-ASIケーブル1本だけを接続して"F SYNC"を"INT"としておくだけで映像が出てくる。
 "ISDB-T System"の項目は意味不明。"TB13"にしないと映像が出なくなる。


OFDM変調器 システム設定2

 地デジチューナでのIIPのPID(Packet ID)は0x1FF0なのに、"IIP Packet PID"は"0000"のままで映像が出る。どうして?TSパケットの、ダミーバイトに埋め込まれた情報のみを参照しているから?

2009年11月26日木曜日

地デジ測定器を動かしてみる(2)

地デジ受信機 6500A


 地デジ受信機6500Aです。マグナデザインネット製の復調ボードを内蔵しています。家庭用の受信機とは違い映像・音声出力はついておらずTS信号が出てくるだけです。付加機能としてTMCC情報の表示やBER(ビットエラーレート)が見られます。写真では、ビタビ復号前のBERが表示されていて、A階層(部分受信・ワンセグ)はエラーなし、B階層(固定受信・ハイビジョン)が1.4×10-4であることがわかります。ビタビ復号後の表示に切り替えるとA階層・B階層ともにエラー表示がゼロになります。
 "EWS FLAG"は緊急警報放送信号を受信したときに点灯するようです。"COUNT DOWN"は緊急警報放送信号が送出されるまでのカウントダウンみたいです。


TMCC情報


 TMCC信号(Transmission and Multiplexing Configuration Control)は、受信機が地デジを受信するときに必要な伝送パラメータ(変調方式やセグメント番号など)を示す信号です。地元のテレビ局のパラメータを一通り見てみましたが、すべて同じでした。MODE3, ガードインターバル比1/8で、
A階層(ワンセグ)のキャリア変調方式はQPSK, 畳み込み符号化率2/3, 時間インターリーブ長4, セグメント数1、そして最後の1は部分受信(ワンセグ)を表している?ものと想像しています。(マニュアルがないので不明)
続いてB階層のキャリア変調方式は64QAM, 畳み込み符号化率3/4, 時間インターリーブ長2, セグメント数12です。

 受信機の仕様によると出力フォーマットは204bytesパケットで、3種類のTS出力フォーマット(1.放送TS, 2.多重化TS, 3.特定階層TS)を選べますが、接続するOFDM変調器には放送TSだけしかつながらないようでした。

この放送TSについては、ARIBの標準規格STD-B31 「地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式」(概要規格書1.7版)付属書「地上デジタルテレビジョン放送の運用ガイドライン」の5章に規定があります。いくら読んでもなかなか理解できないのですが、通常のMPEG2-TSの各TSパケットのダミーバイト部分にTMCC情報等を埋め込んだり、ヌルパケットにIIP(ISDB-T Information Packet)として多重化させ、さらに地デジのフレーム構造を持たせたもの、のようです。フレーム構造を持つため、何らかのかたちで信号伝送に際してはフレーム同期を取る必要があります。
 OFDM変調器は、受け取ったTMCC情報を見て、所期の変調パラメータで変調をかけることになります。

 余談ですが、この受信機には受信したFFTサンプル周波数と同期したSYSTEMクロック出力があります。放送局の送信機の基準周波数はルビジウム発振器により制御されているはずですから、このSYSTEMクロックもルビジウムに準じた精度が期待できる、と言えます。でもFFTサンプル周波数は512/63=8.12698・・・MHzということで、そのままでは使いにくいですね。

2009年11月25日水曜日

地デジ測定器を動かしてみる(1)

 今やジャン測でも地デジ関連測定器が手に入ります。しかもこの世界進歩が早く、陳腐化してしまったためなのか安く入手できるものもあります。でもネット上で地デジ関連の中古測定器を使ってみましたという記事は殆ど目にしません。個人でこのような測定器を入手してもアマチュアTV(ヨーロッパにはDVB-Sの変調器を自作する人もいます)くらいしか使い道がないからかなと思うのですが、「技術的興味」の一環ということで動かしてみました。測定器をいじくり回すだけなので、電子工作趣味のブログとしては、無意味な記事かもしれませんが・・・。

 さて、動かしてみたと言っても入手した測定器の動作確認代わりに受信した地デジをチャンネルを変えて再変調しただけなんですが、ジャン測からちゃんと画像が出たというところに感動がありました。そして測定器取り扱いのため専門用語を調べる過程でいろいろ勉強ができたというのが私にとっての収穫です。


実験ブロック図


 実験ブロック図としては、至ってシンプルです。地デジ受信機で受信した信号を放送TS信号として取り出し、そのまま地デジの変調器で再変調をかけているだけです。

2009年11月9日月曜日

FMステレオチューナ: ケース加工、少し進捗

制御基板の取り付け用のスペーサが足らず、まだ完成途中。




フロントパネル














ケースの中身
電源でかすぎです














ハードウェアはほぼ完成に近づきましたが肝心なソフトはこれからです。AVRで周波数指定データを送り出すところまではできた、つもりなので次はFPGAボード側のHDLの作成です。VHDLとラティスのツールを使うのは気が重いです。
それと、アンテナ端子を開放しているとプリアンプが発振気味です。参ったな。


さてケースの加工についてですが、APB-1のケース加工で加工位置のズレが目立ったので、今度はCADで作成した加工図をシール紙にして貼り付けました。




パネル材料に加工図を貼り付け















パネルの穴開け加工後
位置は合ってるようですが
斜めだったりするのはご愛嬌










今回のパネルは2mm厚。パネル表面には、フィルムラベルを貼り付けますが、穴あけの断面は正面から見えてしまします。そこで断面部分だけ塗装することにしました。補修用のラッカー塗料を使って見ましたが、どろっとしていてめちゃくちゃ塗りにくいです。それで隣にうすめ液が並んでいたのか・・・





断面部分だけ塗装

















パネルの外観はCorelDRAW Essentialsで作成。Visioみたいなソフトで割安に買えます。文字や図形の位置を数値指定して描画させるなら、Visioより少しラクに感じます。
でも加工図を作成するのは非常にしんどかったのでCorelDRAW を使わず安易にCADに頼ってしまいました。



パネル外観














作成したパネルデザインをフィルムラベルに印刷します。高価だけあって非常に美しい仕上がりです。色は他の手持ちのオーディオ機器との調和を考え、ベージュ系を意識しましたが、単なるグレーになりました。ディスプレイ表示とはだいぶ違うものですね。




エーワンのフィルムラベルに印刷











フィルムラベルをパネル材料の貼り付け、細工用のカッターナイフで不要な部分をくりぬきます。けっこう空気が入ってしまいました。位置合わせも大変でした。良い方法はないものでしょうか。




パネル加工後















使用したラッカー塗料と

フィルムラベルのくりぬきに使った
カッター
ナイフ

2009年11月3日火曜日

はんだごての温度

最近の工作では、リード線付きの部品より細か~い表面実装部品を使う機会が増えてます。
なんと言っても表面実装部品は安くて小さくて高性能ということなしです。そんなわけで、使う部品に合わせて工具もそれなりのものが必要になってきます。

最初に考えるのは、はんだごて。
15Wくらいのはんだごてに半月型のこて先を組み合わせて使ってきましたが、大阪パーツランドのセールで割安で販売されていた鉛フリー対応デジタル温調式のはんだごてFX-951に乗り換えました。グットと迷いましたが見た目でチョイス。




ハッコーの温調式はんだごて
はんだごて接続コネクタに
DINコネクタが使われています
MIDIとオーディオ以外で初めて見た
















こて部分
小型軽量です









 このはんだごて、数十秒で暖まるなど使い勝手もよく満足しています。しかし、チップ抵抗やチップコンデンサのはんだ付けで、くすんで色になってしまいキレイにはんだが付かなかったり、つららになってしまうことがよくあり自分の腕が悪いせいだと考えてきました。でも、しかし仕上がったはんだに艶というか輝きがないのは温度設定がマズイのではと考えWebをチェック。RSコンポーネンツのページに”今さら聞けない あんな質問、こんな疑問”というところでいろいろとヒントが書いてあるのを見つけました。

 まずつららについては調べたところフラックス過多が原因のようです。そういえばフラックスを多用しています。そして仕上がりがきたないのは温度がまずいようです。それまで工場出荷時設定通り350度のままでしたが、昨今では鉛フリーはんだが一般的のため私が使っている鉛入はんだには適切ではないかもしれません。

 では、何度に設定すればよいのか。Webで調べましたが探し方がわるいのか具体的な設定値を見つけることができません。まあ趣味だから実験的に決めるというのもやり方のひとつですが、きっと原理原則があるはずです。そこでハッコーのカスタマサポートに問い合わせてみました。するとすぐに丁寧な返事が返ってきました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。

秘密でもないでしょうから紹介しますが、要旨としては次の通りです。

一般的にはんだ付け時の最適温度は、
 ①はんだの融点 + 50℃ = はんだ付け部の最適温度
   (最近では + 10℃~部品の耐熱温度ともいわれています)
 ②はんだ付け部の最適温度 + 100℃ = はんだこての最適温度


これらの条件から、設定温度を検討することにします。
まず、はんだの融点をWeb等で調べます。温度プロファイルとも呼ぶようです。




手持ちのはんだ
(左)ホーザン H-714
(右)グットの銀入はんだ SE-2AG08











  • ホーザン鉛入はんだ H-714は、固相温度183度/液相温度190度
  • グット銀入はんだ SE-2AG08は、固相温度178度/液相温度211度(実物には融点194度と表示があるが??)
  • (参考)ホーザン鉛フリーはんだ HS-342は、固相温度217度/液相温度226度
いずれも融点とは、書いてありません。

 固相温度とははんだの溶け始めの温度で、液相温度は完全に溶ける温度ということのようで、両者の中間の温度では固体と液体の両方が存在しているそうです。この温度差が大きいと、固化するときにミクロに見れば組成が一様にならずよろしくないということで、両者を一致させた「共晶はんだ」というものがあるということです。

 ところで銀入りはんだは、銀メッキや銀電極部分に使用するためのはんだだということです。一般のはんだで銀メッキ部分にはんだを行うと、経年変化でマイグレーション(銀移行現象)が発生し、当該部分が脆くなり、はんだの信頼性が著しく低下するそうです。さらに一般的な部品ではんだメッキ部分に銀入りはんだを使うと害があるとも・・・、メーカでははんだごてを使い分けているそうです。今まで仕上がりが輝いてキレイだという理由で銀入はんだを使ってきましたが、驚きました。

 さて本題に戻し、ハッコー社の回答によるとはんだごての設定温度は融点+150度ということでしたが、ここでいう融点として、グットの表示のように固相温度と液相温度の中間と考えてみます。
ホーザン鉛入はんだH-714は337度、グットの銀入はんだは344度、ホーザン鉛フリーはんだは372度となります。ただ融点+150度という程度の概算ですから10度単位くらいで合わせておけばよいのかなと思います。

2009年11月1日日曜日

JJY標準電波の受信確認証

 JJY標準電波は、独立行政法人情報通信機構(NICT)が長波の40kHz(福島県)と60kHz(佐賀県)で送信を行っており、市販の電波時計でも利用されています。

 今回、『おおたかどや山標準電波送信所開局10周年記念』と称して10周年記念カード(ベリカード)が12月31日までの期間限定で発行されています。早速、「受信報告」を送ってみたところ、送信アンテナの写真が写ったカードが届きました。




JJYの受信確認証(ベリカード)












 受信確認証の発行条件として電波時計での受信は対象外と明記されています。「おおたかどや山」の周波数は40kHz。長波も受信可能なSDR受信機でコールサインのモールス信号を聞ければ良いわけですが、あえて信号の可視化を試してみました。(まあ趣味ですから・・・)

まず受信アンテナです。
電気配線用のモールを十字型に組み合わせガムテープで固定。この枠に細いワイヤーを2回巻いてビニルテープで固定してみました。製作時間は15分ほどです。もとの電波が強いので非同調のいい加減なアンテナでもなんとか受信できます。





枠型アンテナ

これを物干しから吊します
















受信機としては、スペクトラムアナライザを使いました。ウォーターフォール表示機能でモールス符号が見えてきます。まあ特徴的なパルスの断続なので耳で聞いてもわかりそうです。
モールス符号の一覧はこちら。(ウィキペディアのページJARLのページ





可視化したモールス符号

右側に同じタイミングで
60kHzも見えます。













 このJJY、もともとは短波帯のサービスでしたが2001年3月で短波での送信を止めてしまいました。当時を懐かしむ人がいるのか、短波JJYもどきの時報音を発生させるキットまであります。これに、NICTのページで公開されている時報音声データを組み合わせればカンペキかも。