FMトランスミッタを経由して音楽を聴く場合、ラジオのステレオインジケータが点滅して一時的にステレオ受信できなくなってしまうことがあります。この理由としてはだいたい2つあります。
- プリエンファシスによって高音域のレベルが持ち上がり過変調のためFM復調できなくなる。
- 音楽に含まれる高音成分がステレオパイロット信号に干渉し、ステレオ復調できなくなる。
前者の対策は、プリエンファシスを考慮したコンプレッサ/リミッタを作ることになりかなり難しそう。こういう処理はMultiMaxやSound Solution等のソフトに任せるとして、今回はデジタルフィルタのお勉強をかねて、後者にチャレンジしてみます。
・・・記事が途中で止まった場合、挫折した、と察してください。
2.要求仕様
(1)FM放送音声の最高周波数
CDなどの音楽ソフトでは、20kHzを越える周波数帯までを再生することができます。ところが、FMステレオ放送のパイロット信号は19kHz。ちょうど周波数帯が重複するので、この周波数の音声信号を除去するローパスフィルタが必要になります。
FM放送音声の最高周波数は、総務省令で定められており最高15kHzということになっています。また、総合周波数特性としては、電波法の無線設備規則で理想プリエンファシス特性曲線からの偏差として規定されています。(ネットでは特性図が見れませんね。電波法令集を買うしかない?)
【総合周波数特性の許容偏差】
50Hz: 0~-3dB
100Hz ~ 10kHz: 0~-2dB
15kHz: 0~-3dB
(2)パイロット信号
FMステレオ信号では、メインチャンネル(L+R)の最大変調度は90%、19kHzパイロット信号は10%一定です。メインチャンネルとパイロット信号のレベル差は少なくとも19dBあります。パイロット信号に影響を与えないために必要なレベル差がどれだけなのかよくわかりませんが、仮に10分の1まで許容されるなら加えて20dB低減しなくてはなりません。さらに、プリエンファシスで高音域が持ち上げられる(15kHzで13.6dB)ことを考えると、
19dB + 20dB + 13.6dB = 52.6dB
をフィルタで低減させる必要があります。
(2)ローパスフィルタの仕様
どの程度の規模が妥当なのか見当も付かないので、とりあえず目標とする仕様を決めます。
- フィルタタイプ: FIRフィルタ
- タップ数: 128
- 入力サンプリング周波数: 152kHz
- 出力サンプリング周波数: 152kHz
- 入力ビット幅: 18bit
- 出力ビット幅: 18bit
- 通過域: 0~15kHz(リプル0.5dB以下)
- 阻止域: 19kHz(減衰量50dB以上)
0 件のコメント:
コメントを投稿