2012年1月7日土曜日

中波受信用ループアンテナ その8(ループアンテナの自己共振点)

ループ直径や巻き数を増やせば受信電圧が上がる

ループアンテナ誘起電圧Vは、ループアンテナ面積A [㎡]、ループ巻数N [回]に比例します。ループアンテナが直径D[m]の円形であれば、受信電圧は直径Dの2乗、ループ巻数に比例します。


受信電力ついての前回の試算でわかるとおり、微小ループアンテナの放射抵抗Rrが損失抵抗Rlossとくらべ著しく小さいため、実際に取り出すことができる電力が低くなっていました。
これを改善するには、放射抵抗Rrに対する損失抵抗Rlossの比率を減少させる必要があります。
ところで放射効率ηの式を変形させると同じことを示していることがわかります。放射効率ηをあげるには、Rloss/Rrを小さくします。


損失抵抗Rlossは、銅損(配線の直流抵抗や半田付け)、誘電体損(プリント基板を使うアンテナなど)、表皮効果等とのことで、中波受信用のループアンテナでは表皮効果が大きなウェイトを占めていそうです。表皮効果による抵抗はループアンテナエレメントの長さに比例します。
放射効率ηは、ループアンテナ直径Dの3乗、ループ巻数Nに比例します。(ただしRloss ≫ Rrのとき)


上記より、巻き数Nよりループアンテナ直径Dを大きくするのが効果的ということがわかります。


ループアンテナ巻数の制限
ループアンテナ直径Dを拡大すれば急激に性能アップするとわかっていても、設置場所の制限から現実的には難しいので代わりに巻き数Nを増やすことを考えます。
巻き数を重ねればいくらでも性能が上がりそうですが、RFワールド誌の記事によれば、ループ長が0.05波長以上になると電流に高次モードが発生し、ループ長がさらに大きくなると高次モードの量が大きくなりインピーダンスが急に大きくなるそうです。図示されたグラフを見ると、せいぜい0.06波長程度までに押さえておくのが無難そうに感じました。
この点だけに着目すると、0.06波長はAMラジオ帯域の上限1,602kHzで11m、下限531kHzで34mです。例えば直径50センチの円形ループアンテナの巻き数ではそれぞれ7回と22回になります。

1本のアンテナでAMラジオ帯域のすべてをカバーしようとすると、受信電圧を犠牲にして巻き数を減らすかタップ分けする必要がありそうです。

もうひとつ、アンテナの巻き数を増やせない要因としてアンテナの自己共振があります。アンテナとして使うためには、自己共振点より低い周波数で使用します。
同軸ケーブルを使ったシールドループアンテナの自己共振点は、リアクタンス成分と同軸ケーブルがもつ静電容量との並列共振で決まります。同軸ケーブルの静電容量は75Ωで67pF/m、50Ωで100pF/mと特性インピーダンスが同じなら、同軸の太さによって変わりません。

今回のループアンテナは75Ω同軸ケーブルを使いましたので静電容量は次の通り。
4回巻: 0.5m×π×4回×67pF/m=421pF
2回巻: 0.5m×π×2回×67pF/m=210pF
1回巻: 0.5m×π×1回×67pF/m=105pF

次に、測定した自己共振周波数からインダクタンスを逆算します。
4回巻: 自己共振周波数 1.55MHz → 25uH
2回巻: 自己共振周波数 4.2 MHz →  6.8uH
1回巻: 自己共振周波数 10 MHz →  2.4uH

これらはリアクタンス実測値によく一致しています。(同軸ケーブルの静電容量は分布定数的なんですが集中定数的に取り扱っても良いんですかね?)
この実測値によると、中波受信に75Ω同軸ケーブルを使ってシールド形マグネチック・ループアンテナを作る場合には、自己共振点の都合からせいぜい直径50センチでは2, 3回しか巻くことができないことがわかりました。


参考資料
・山田吉英(2011) 小型アンテナの特性と設計に使う基本式 RFワールドNo.14, 18-21
フジクラ - 同軸ケーブル

2 件のコメント:

  1. 名人様
     リタイアして、趣味の幅を広めようとうっかり誤って始めた遠方受信(の準備)、資料集めているうちにこんな立派なHPに迷い込みました、67歳。
     50年以上前に毎日楽しんだラジオと送信機製作の頃を思い出し、昔買ってほどなく仕事に追われて、箱に乾燥密封したソニーのICFなんとかいう初心者通信ラジオが何十年か後に当時のままピカピカであったことに気をよくし、ソニーに小さなアンテナをくっつけてDX事始めとなりました。
     こんなときに「たまごの電子工作・・」に遭遇、直ぐお気に入りにいれ、「名人の電子工作」としました。「専門家」より「名人」に余裕を感じさせられたからでした。
     もう時効となった大昔、中1の頃コールサインを持っていました。JA6B○○までは思い出せます。もう、今はとっくに免許剥奪になっているはずで、恥ずかしい限りです。
    こんなわけで、貴記事にコメントなどは全くできそうもありません、ヒヨコのままでしょう。
    今後ともよろしくお願いします。
    昔のICFファンより


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  2. 昔のICFファン様、過分なご評価を頂き恐縮です。
    私もラジオの遠距離受信に入れ込んだ時期がありました。インターネットがない時代にも、遠方の土地の雰囲気をリアルタイムで感じることができて楽しい思い出です。

    このアンテナの製作をキッカケにラジオのスイッチを入れる時間が格段に増えました。いま改めて聴いていますがいいです。ラジオは。
    アンテナには市販品もありますが、趣味の工作の範疇でも工夫できる余地がたくさんあります。機会があればぜひお試し下さい。

    こちらこそどうぞよろしくお願いします。

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