2011年5月27日金曜日

積層セラミックにバイアス電圧をかけて容量を測る

デジットで大容量の積層セラミックコンデンサを入手したことをきっかけに、直流バイアス電圧を印加したときの静電容量を実測してみました。バイアス電圧によって静電容量が変化するのはデータシートにも書かれている通りなわけですが、その変化は瞬時に起きるのではなく、LCRメータの表示は分単位でじわ~っと変化していきます。これを見て、オーディオの人たちが積層セラミックコンデンサを嫌う理由をなんとなく理解できたような気になりました。また、100uFなのに実測値は43uFしかないものがありました。積層セラミックコンデンサというのは、かなりクセのある部品のようです。

測定環境は、安藤電気のLCRメータAG-4305と、バイアス電圧用の電源装置を併用しました。バイアス電圧可変範囲は0~18Vです。LCRメータの測定電圧は1Vrmsとしました。また測定時の室温は24℃でした。

※実はこの測定条件には不備があります。10uFを越える積層セラミックコンデンサを測定するときは、測定周波数120Hz、測定電圧0.5Vrmsとしなくてはいけないそうです。


測定風景(LCRメータとバイアス電圧用の電源)


測定したコンデンサ(SMDをのぞく)



(1)日本ケミコン 積層セラミック 100uF 25V


デジットで購入したものです。型番は不明です。日本ケミコンのカタログからは同じサイズの製品は掲載されていません。
ゼロバイアス状態で、室温24℃では、87.3uF 誘電正接0.017。コンデンサを手でつまんで暖めたところ83.9uF 誘電正接0.013となりました。DCバイアス電圧による静電容量変化は大きくはないです。誘電正接は、とても優秀です。




(2)村田製作所 積層セラミック 100uF 25V


オーディオ用に使おうと1990年頃にお取り寄せしました。確か電話交換機に使われていると聞いた覚えがあります。

型番: RPE260E107Z25
使用温度範囲: E特性 -25~+85℃
静電容量: 許容差Z +80/-20% 測定周波数1kHz、測定電圧0.1Vrms
誘電正接DF: 0.05以下 測定周波数1kHz、測定電圧0.1Vrms
静電容量温度特性: 電圧印加なし +20/-55%以内、電圧印加時(定格50%) +20/-80%

下記にデータシートのグラフを示しますが、静電容量変化の実測値はデータシートよりは良いですね。誘電正接はとても優秀です。


静電容量-温度特性(データシートより)

直流バイアス特性(データシートより)





(3)Supertech Electronic Co. 積層セラミック 100uF 6.3V



秋月電子で購入。説明書きを読むと村田製作所GRM31CF10J107ZE01Lをモールドしたものだそうです。確かに(4)と同じ特性です。




(4)村田製作所 チップ積層セラミック F特性 100uF 6.3V

秋月電子で購入。村田製作所 GRM31CF10J107ZE01L、静電容量の許容偏差は-20% +80%、3216サイズです。

型番: GRM31CF10J107ZE01L
使用温度範囲: F特性 -25~+85℃
静電容量: 100uF 許容差Z +80/-20%
誘電正接DF: 0.05以下 測定周波数1kHz、測定電圧0.1Vrms
静電容量温度特性: F特性 +30/-80%

実測データを見るとわかるとおり、ゼロバイアス状態で50uFもありません。定格は100uFなのに。何か理由があるでしょうから調べてみますが、5Vラインに使うと10uFしかないというのはちょっとあんまりです。





(5)KEMET チップ積層セラミック X7R特性 10uF 16V

Digi-Keyで購入しました。KEMETの、静電容量の許容偏差は±10%、3216サイズです。


型番: C1206C106K4RACTU
使用温度範囲: X7R特性 -55~+125℃
静電容量: 10uF 許容差 +10/-10%
誘電正接DF: 0.035以下

X7R特性というのは、許容差 +10/-10%だからDCバイアス電圧を印加してもその範囲に収まるものだと思っていました。ところが実測値はその期待を裏切るもの・・・というか私が知らなかっただけなんでしょうね。10uFと思って5Vラインに使ったら、実際には5uFしかないわけです。これはちょっとわかりにくいです。




(6)村田製作所 チップ積層セラミック B特性 10uF 6.3V

秋月電子で購入。村田製作所GRM21BB10J106KU、2012サイズです。

型番: GRM21BB10J106KU
使用温度範囲: B特性 -25~+85℃
静電容量: 10uF 許容差K +10/-10%
静電容量温度特性: B特性 +10/-10%



(7)松尾電機 タンタル湿式電解コンデンサ 350uF 25V



松尾電機のタンタル湿式電解コンデンサ311です。高信頼性を追求した製品ということで、防衛省や宇宙航空研究開発機構の認定品もあるそうです。使用温度範囲が広いことと、故障率が低く、半永久的な寿命をもつことから人工衛星にはこういった部品が入っているんでしょうか。

型番: 311P 2502 357M
静電容量: 350uF 許容差M +20/-20%
誘電正接: 35%
容量変化率: -70%(-55℃) +25%(85℃) +25%(125℃)
使用温度範囲: -55~+125℃

タンタルは逆電圧に極度に弱く、説明書きにはテスターで測定するときも極性に気をつけろと書かれています。ところが、この311シリーズは、何と3Vの逆電圧に耐えるとあります。

実測値を見ると、積層セラミックコンデンサ以外は、静電容量や誘電正接はDCバイアス電圧により大きく変化しません。




(8)Nichicon-Sprague 乾式タンタル固体電解コンデンサ 220uF 20V




(9)ニチコン ディップタンタル電解コンデンサ 220uF 10V




(10)松下 アルミ電解コンデンサ 470uF 25V




(11)ニチコン 導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ 470uF 10V



ニチコンの導電性高分子アルミ固体電解 PLF1A471MD01 です。静電容量の許容差 +20/-20%。誘電正接が低いです。



(12)AVX チップタンタル電解コンデンサ 47uF 16V



確か秋月電子で買ったと思います。AVXのタンタルコンデンサTAJD476K016RNJ です。安心して使える特性ですね。



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