2010年2月3日水曜日

ルビジウム発振器(7): 動作確認・測定

出力レベル、スプリアス
 ヒートラン後に再度分配増幅器の同調コイルを調整してみました。結構同調ズレがみられました。同調コンデンサに温度補償型ではなく一般品を使ったせいかもしれません。レベルは、実測値で約6.3dBmと目標仕様の7dBmより若干低めとなりました。

 心配していた、スイッチング電源ノイズの目立った影響はありません。1MHz以下にノイズがありますがレベルも低く特段問題ないでしょう。


スプリアス(DC-20MHz)


スプリアス(15-100MHz)


 一方、高調波は結構出ています。分配増幅器出力での2倍が-49dBc、3倍が-48.5dBc程度です。ルビジウム発振器の出力は直接測定していませんが、JA9TTT加藤氏のブログの測定波形によれば、2倍が-60dBc、3倍が-72dBc程度と良いので、分配増幅器の歪みによるものと推測しています。

 分配増幅器で使用した電流フィードバック型オペアンプAD813の データシートによると、高調波ひずみは電源電圧と負荷抵抗によって異なるようです。今回は、単電源24V動作で負荷は100Ω程度です。負荷がグラフの例 より重めということで、Vs=±5V寄りの特性であると仮定すれば、基本波10MHzの2次、3次高調波とも約-50dBc程度であると類推され実測値に 近いと言ってもいいのかな、と思います。

AD813の高調波ひずみ(データシートより)



位相雑音
 スペアナに位相雑音の測定機能を使ってみます。キャリアから10Hz離れで約-90dBc/Hzという結果となりました。LPRO-101の標準値は-96dBc/Hz(@10Hz offset)なので少し悪いです。何故?・・・というか、測定法はこれで良いのか。また、参考までにHP 8657A信号発生器も測定してみました。

2010.2.6追記
 位相雑音が期待よりも高めに測定された理由は、Noise Bandwidthが5Hzと広く設定していたせいだと思います。図でわかるように5Hzの帯域内でスペクトラムに勾配がありますが、この帯域内で平均をとればちょうどキャリアから10Hz離れのノイズレベルと一致するからいいだろうと思っていました。でもこのグラフの縦軸は、dB表示なので平均値を計算するには、いったん真数に戻して平均をとらなくてはいけません。基本的なところですが、忘れていました。この図の設定とスペクトラムの形状から想像すると、C/N値は概算で7~8dB程度悪く表示されていたのでは、と推測しています。(実機で確認したわけではありませんが・・・)

2010.2.7追記
 C/N値の概算推定値ですが、あまり変わらない、と訂正しておきます。
 この波形はデシベル表示で帯域内の周波数特性がフラットではないので帯域電力は帯域内の最大値により大きく影響を受けます。このノイズ測定帯域内ではキャリア+5~+6Hz付近の電力が最大で約-80dBm。1Hzあたりに換算すると、5で割って(-7dB)、-87dBm/Hzとなります。キャリアレベルは+5dBmなので、ノイズ帯域5HzでのC/Nは-92dBc/Hz。
 次に、キャリア+10Hz付近の1Hz帯域に着目すると-85dBmなので、C/Nは-90dBc/Hzとなります。


LPRO-101のC/N(分配増幅器出力で測定)



HP 8657AのC/N



周波数
 一番、肝心な周波数については、放送局の基準信号(おそらくルビジウム)に同期しているであろう地デジのシステムクロックを測定してみました。
 周波数カウンタの外部基準入力にルビジウム発振器を接続して、システムクロック512/63 = 8.126984126・・・MHzを測ったところ、0.1Hzの桁まで一致していたので少なくとも10のマイナス8乗程度までの精度は出ていると言ってもいいでしょう。


地デジのシステムクロック


アラーム表示
 ルビジウム発振器同期とルビジウムランプ異常の2つをつけました。電源投入時は、同期表示は消灯、ランプ異常は光出力が低いので点灯します。数分待つと、同期表示が点灯するようになりますが、点灯したばかりのときは、周波数が数ヘルツオーダーでドリフトしますが、さらにしばらくするとピタッとドリフトが止まります。

電源投入時の表示


同期表示


温度上昇
 2時間ほどヒートランして、ルビジウム発振器の温度を測定したところ約40度(周囲温度20℃)と20℃温度上昇していました。規格値は70℃以下ですので、真夏の室温を最大40℃と想定すればなんとか大丈夫というところだと思います。


おわりに
 ルビジウム発振器の機能としては単に正確な10MHzが出てくるだけですが、ジャンクで原子同期の周波数標準を手に出来るなんて10年前なら予想すらできなかったことで素晴らしいことです。今回の製作は、心臓部に出来合いのユニットを使っているため、電源や分配増幅器と言った周辺とのインターフェースを検討するだけでしたが、それでもいざやってみるとわからないこと、思い通りに行かないことが多く勉強になりました。また、完成品の出来映えは概ねイメージ通りでしたが、パネルのデザインは地味でパンチがないと感じてまして少々不満が残りました。(こういうのは苦手です・・・)

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