2012年4月20日金曜日

中波受信用ループアンテナ その22(受信帯域幅を拡大して音質改善)

同軸ケーブルで製作したループアンテナの課題

1.帯域幅が狭い
無負荷時の帯域は4kHz、負荷接続時は6kHz強(アンテナインピーダンス88Ω、負荷インピーダンス50Ωのとき)になっているものと推測しています。
ラジオ放送には強力なプリエンファシスがかかっているため高音が出ないといった違和感はないですが、やや歪み感があります。


→ 複同調回路で帯域幅を広げてみる

2.同調周波数ずれ
1ヶ月ほど屋外で使用しているうちラジオの受信音質が歪みっぽくなりました。同調周波数を測ると3kHzほど低くなっています。
同調周波数は、エレメントのインダクタンスと同調コンデンサのキャパシタンスで決まります。これは屋外設置後電線管の中で同軸ケーブルの位置がずれたり温度変化で同軸ケーブルの長さが変わることによってインダクタンスが変わったことと、同調コンデンサのキャパシタンス変動によるものと思います。
エレメントの温度特性は予想も付きませんが、同調コンデンサはマイカコンデンサ(±200ppm/℃)とトリマコンデンサ(±2.5%)を使っており、特にトリマコンデンサの変動は無視できません。


→ 同調コンデンサには温度特性の良い物を選定し、特にトリマコンデンサの容量は最小限にすることにします。同調に影響するコイルも同様に配慮する


複同調回路で帯域幅を拡大

これは某氏の好意で頂いた設計データ(C1~3、L1)です。PSpiceを使うと便利にシミュレーションできるそうですが。。。


複同調と言うことでループアンテナのインダクタンス(45μH)とC1、L1(45μH)とC2の2組の同調回路を組み合わせています。C2を変化させると同調回路相互の結合度が変わるそうです。L1の両端からトランスでインピーダンス変換して出力を取り出します。
C1, C3は、マイカコンデンサに並列に45pFのトリマコンデンサを接続して同調周波数を微調整します。C2には積層フィルム型のコンデンサを選びました。
変圧比12:1のトランスは、トロイダルコアに24回巻いて2回巻目にタップを引き出したものです。



L1のインダクタンスは45uH必要で、T68-#2の場合は計算上は89回巻となります。ここで巻線としてUEW 0.32mmを使う場合、1層巻の上限は80回なので、9回分は重ねて(2層)巻く必要があります。
『トロイダル・コア活用百科』によると、”トロイダル・コイルの巻線はコアの全周にわたって均一に分布するように巻く” もので “巻線が片寄っていると漏れ磁束を生じる” ため、インダクタンスが計算値と比較して多めになるようです。
今回の場合、89回巻を実測すると48.3μH(594kHzにおいて)となり、トロイダルコアの製造誤差の範疇かもしれませんが巻数を調整して86回巻で45μHになりました。




複同調回路の調整

調整前のインピーダンスはこんな感じです。2つのトリマコンデンサを調整しますが、山のピークを思うように動かすことができません。

594kHz付近を平坦にしたいところですが・・・


複同調回路は、2つの同調回路の結合度を調整して単峰特性と双峰特性を実現するものです。私は、同調周波数の異なる2つの同調回路を結合させるものと理解していましたが、実際には同調周波数の同じ2つの同調回路の結合度を変化させるだけで特性が変わるものでした。このため、期待通りに調整することができなかったのです。

そこで某氏に調整方法を指導して貰います。
(1)まずはC1またはC3の片方を調整して2つの山の高さを揃える
※相互の同調周波数を揃える
(2)C1とC3を同量ずらして全体の周波数を調整
(3)片方のトリマだけを調整して2つの山の高さを揃える

これらを繰り返して全体の周波数を調整します。山の間隔は、C2で結合度を変えて調整します。
下の図は、結合度を (C2を大きく)にさせたときの変化です。(下の図のほうが結合度が  になる)





調整中の図



受信テスト

インピーダンスアナライザでレジスタンス成分、リアクタンス成分、位相を測りながら調整しました。ただ、3つの指標の何を基準に合わせればよいのか困りました。結局、中心周波数で位相が0度になるようにし、レジスタンス成分の2つの山の高さを合わせるよう調整しました。
結果的には、C2=0.1uFとしました。ただこれは、帯域幅を広げすぎたようで結合度が密のため損失が増えてしまい(通過帯域中心の減衰量が増える現象)受信レベルが下がってしまいました。




最後に受信テストです。
受信機に接続して、あれっと感じたのはNHK第一以外まともに受信できないことです。
複同調回路はフィルタをカスケード接続するようなものですから、スペアナで見ると希望周波数以外が大きく減衰している様子がわかります。また、受信レベルが7dBも低くなってしまいました。もう少し定数を見直したほうが良いかもしれません。
また、懸案だった受信音質は改善されました。






参考資料

home page of, JF1OZLコイルの基礎実験:複同調の磁気結合係数とバンドパス特性に関して
無線工学の基礎(1アマの無線工学) - 受信機の選択度とIFTの特性 通過帯域幅・単峰特性と双峰特性

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