2012年1月4日水曜日

中波受信用ループアンテナ その7(ループアンテナの端子電圧を検証)

前回の検討で、当地のラジオ第一放送594kHzの予測電界強度は 39.5 [mV/m] (92dBμV/m)ということがわかりました。次に、自作ループアンテナの期待される受信電圧と実測値と比較してみることにします。

理想ループアンテナの受信電圧

ループアンテナの実効高は、計算で求められます。

直径0.5m 2回巻ループアンテナを594kHzで使用するときの実効高は0.0049m(-46.2dB)。電界強度 39.5 [mV/m](92dBμV/m)でループアンテナに誘起される電圧は、39.5×0.0049 = 0.19mVとなります。また、放射抵抗の計算値は7.4×10^-8 Ω(0.074マイクロΩ)でした。

ループアンテナに受信機を接続するときの等価回路は次の通りです。アンテナで受信した電力を最大限受信機まで伝送するには、R1 = R2 (= 0.074マイクロΩ)とします。受信機端での受信電力は、(0.19mV/2)^2 ÷ (7.4×10^-8 Ω) = 0.12W と意外に大きなものになります。これをトランス等で無損失で50Ωに変換できたとしたら、2.5V (+20.9dBm) となります。



自作ループアンテナの受信電圧

次に自作ループアンテナの受信電圧を検証してみます。直径50センチ 2回巻きのループアンテナを594kHzで使用するときの等価回路は次の通りです。



ループアンテナの出力抵抗のうち、リアクタンス成分はマッチング回路でキャンセルされるため抵抗成分のみに着目すると、ループアンテナからマッチング回路側を見ると、約0.6Ωに見えます。
ループアンテナの誘起電圧0.19mVは、ループアンテナ出力部でアンテナ放射抵抗、アンテナ損失抵抗、負荷抵抗(トランスで約0.6Ωに変換されて見える)で分圧されて0.095mVとなります。次にマッチング回路で9倍に昇圧されますが、マッチング回路素子での損失を2dB(80%)と見込むと、受信機入力では0.68mV (56.7dBμ)となります。

ところで受信端子電圧の実測値は、ループアンテナを垂直に設置したとき49.7dBμ、水平に設置したときに52dBμでした。受信端子電圧を測定したのは昼間12時ですので、送信所から到来する電波は垂直偏波の地表波のはずですからループアンテナを垂直設置するのが正規の受信方法になると考えられます。
この例では水平設置のほうが垂直設置より受信電圧が高くなっています。この理由は、推測の域を出ませんがアンテナ設置場所の都合もありコンクリート造の手すりの鉄筋からの再輻射波の影響を受けてしまっていたのでは考えています。

また、計算値より実測値の受信端子電圧が7dB低いのは、計算条件と実際の差異・地域的な条件、アンテナ周囲状況および設置条件等により受信電界強度が低かったためと考えています。



まとめ

著しく性能が低いように思えた自作ループアンテナですが、机上での試算結果と実測値がかけ離れていることはなく、必然であったということがわかりました。また、アンテナ損失抵抗の影響でアンテナ受信電力が著しく下がっていることを確認できました。

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