表皮効果
表皮効果は、導体に交流電流を流すとき、周波数が高くなるほど中心部には電流が流れにくく、導体表面に近いところに集中して電流が流れるようになる現象です。
導体の抵抗値は次式の通りですので、表皮効果により導体の実質的な断面積が減少すると、抵抗値が増加します。
また、導体を流れる電流密度は導体表面から深い位置ほど指数関数的に小さくなります。表皮効果によって表面電流の1/e(約0.37)となる深さdは次の通り。
この表皮深さを計算してみました。この表によると、音声帯域はもちろん商用電源の周波数でも表皮効果の影響を受けますし、中波放送帯では0.1mm以下と導体表面にしか電流が流れていないことがわかります。
表皮効果は、電線の他にもシールドケースの設計でも考慮されるそうです。低い周波数で効果を持たせるには、表皮深さを考慮した厚いシールドケースが必要になるとのこと。また、高周波コネクタの銀メッキも表皮効果を軽減させる目的で抵抗率が低い銀を高周波電流が流れやすい導体表面に使うそうです。
表皮効果による抵抗値
久しぶりに積分の計算にチャレンジしてみましたが、変な結果が出て手も足もでませんでした。仕方ないので先人の簡易計算例を参考にしてみます。まずは円形断面の電線(D ≫ d(表皮深さ)のとき)の場合です。
次に、平板導体(t, W ≫ d(表皮深さ)のとき)の場合です。
計算例
(1)円形断面の電線
グラフにしてみました。導体外径が小さいところで500kHz~1MHzの抵抗値が直流抵抗より低くなっているのは、表皮深さと導体外径が近づき概略計算式の近似条件が満たせなくなったためと思われます。このような領域では、DCでの抵抗値に収斂していくはずです。
(注1)メーカーカタログ値
(注2)円形断面とみなしたときの計算。実際はより線なので正確ではありません。
(2)平板導体
高周波用機器で配線のために電線ではなく銅板を使う場合があります。また、短波受信用ループアンテナのエレメントとしてアルミ製フラットバーを使う例もありますので計算してみました。
参考資料
・スタック電子 - 表皮効果(Skin Effect)
・三度の飯とエレクトロン - 表皮効果
・山田吉英(2011) 小型アンテナの特性と設計に使う基本式 RFワールドNo.14, 18-21
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