2012年2月23日木曜日

中波受信用ループアンテナ その15(PF管を巻き枠に)

このところ机上検討ばかりで飽きてきたので何かしら手を動かすことにしました。
これまでの検討で、自分の中で概略の方向性は固まってきています。


想定プラン

・屋外設置で直径は50センチ。
・風で飛んでいったり部品落下が心配なので軒下にぶら下げて設置する。軒下とはいえ、雨をかぶったり直射日光に当たるので耐候性にも少しは留意し、10年程度は使えるものにしたい(願望)。
・シールドループアンテナは、何かと制約が多いのであきらめ。コモンモードフィルタを使えば、若干の効果があると期待。
・アンテナエレメントには、それなりに太さがあって安く買える5Cクラスの同軸ケーブル外皮を使用する。金属パイプを使うと格好は良いが、完成できない予感がするので今は見送り。
・巻数は4~8回を目標にする。
・同調型のループアンテナでNHK第一専用、できればAFNも聞きたい。もちろんパッシブ型。
・アンテナエレメントの巻き枠としてフレキシブル電線管を使い、風で曲がらない程度に丈夫なものとする。


材料探し

近所のホームセンターでは電材が少なく、遠くのスーパービバホームまで足を伸ばすことにしました。品揃え良くて楽しいです。
ちょうど内径28mmのパナソニックのPF管があったので買ってきました。ただ色がイマイチ、ネズミ色です。整合回路を入れるケースには、未来工業プルボックスPVPとしました。




何回巻けるか

電線管の中に同軸ケーブルを通すだけなので、巻けるだけ巻くというのもひとつの答えですが一応計算してみます。電線の占有率は何かに規定があったよなと調べてみたら、内線規定に書いてあるそうで普通は32%、管の屈曲が少なく容易に電線を引き入れ引き替えができれば48%だそうです。このループアンテナの場合は、曲がりがキツイので本来なら32%をめどに考えるべきでしょう。

電線管の断面積は615m㎡、同軸ケーブルの外径は7.4mmなので断面積は43m㎡。占有率を32%とすれば4.6本、48%でみれば6.8本。頑張って6回巻ければ良いかなというところです。あとはやってから考えましょう。

2012年2月12日日曜日

中波受信用ループアンテナ その14(アンテナファクタ・アンテナ係数)

電界強度の測定では、アンテナの受信電圧から電界強度に換算することが良く行われています。換算用の係数をアンテナ係数(アンテナファクタ;Antenna Factor)といいます。測定用アンテナの仕様書には、この係数値が書かれています。(リンク先の資料で変換係数がそれに類するものです)


ループアンテナのアンテナファクタ

これまでの検討で、受信電力の簡易予測式を導きましたがアンテナファクタのほうが実践的ですので、これで検討を進めます。
本来のアンテナファクタ値は、アンテナの利得、整合回路損失、不整合による損失、測定ケーブルの損失など諸々含めての係数値です。今回の検討ではループアンテナの形状を選定するために潜在的(理論的)な能力比較を行うため、ループアンテナそのものに着目し、かつ無損失で整合できると仮定した場合のものですから本来の”アンテナファクタ”とは異なることに注意して下さい。

受信電力と電界強度の関係は次の通りです。但し、受信電力P、比例定数k、電界強度E、(終端)負荷電圧V、負荷抵抗R。


次に、アンテナファクタAFは電界強度を受信電圧で割った値です。


上式の対数を取ると次のようになります。


電界強度と負荷電圧値の関係は負荷抵抗が50Ωのとき次の通りです。但し、電界強度E [dBμV/m]、終端受信電圧V [dBm]、アンテナファクタAF [dB]。




アンテナファクタの試算

ループアンテナエレメントの線種を変えたときのアンテナファクタを試算してみました。試算では、屋外アンテナを想定して直径50センチとしています。アンテナファクタは、数値が小さいかマイナスの方がより高い受信電力が得られます。
この結果を見ると、当初試作をした3C-2VS同軸ケーブルの芯線を使ったもののアンテナファクタは0.6MHzで31.2dBと思わしくないことがわかります。幅広のアルミ平板では、少ない巻き数で良い結果が得られることが期待できるものの実際に作るとなると構造的に一工夫必要です。

今回の試算は、細い電線で巻き数を増やすより、少ない巻き数の幅広銅板のほうが良いものを作れる可能性があるのでは?という発想から始まりました。幅広銅板(幅5センチ・2回巻)は、8D-2V(2回巻)より4dB弱優れていますが、作りやすさやコスト面を考えると、月並みですが5Cや8Dクラスの同軸ケーブル外皮を使うのが現実的になのかなと思っています。

2012年2月1日水曜日

中波受信用ループアンテナ その13(バーアンテナの利得・実効高)

バーアンテナの実効高(利得)

ポータブルラジオによく使われるバーアンテナの実効高について考えてみました。


写真のバーアンテナは、手持ちで最も大きく高性能そうに見えるもので、実測で次のような特性を持っています。

・フェライトバー: 直径1cm、長さ15cm
・中波ラジオ用巻線(右側): 75回巻、直流抵抗値1.23Ω
・インダクタンス: フェライトありのとき384μH、フェライトなしのとき23μH

インダクタンスは、フェライトバーの実効比透磁率の分だけ大きくなるので実効比透磁率μeは、384÷23 ≒ 16.7 であることがわかります。
フェライトバーアンテナもループアンテナの一種で、ループアンテナの見かけの面積はフェライトバーの比透磁率の分だけ大きくなりますから実効高は次のようになります。但し、実効高h [m]、実効比透磁率μe、ループアンテナ面積A [㎡]、ループ巻数N [回]、波長λ [m]


上式を使うと、バーアンテナと実効高が等しいループアンテナの大きさを計算できます。波長が同じなら、分子のμe×A×Nの積が等しければ 実効高が等しくなります。

バーアンテナは、μe×A×N = 16.7×(π×0.005^2)×75 = 0.098 [㎡] です。
そして1回巻のループアンテナなら、比透磁率は 1 なので、ループ面積0.098㎡に相当します。
ループ面積0.098㎡は、直径35センチ相当なのでフェライトバーを使うことでかなりの小型化ができていることがわかります。ただ、実効高が同じでも直流抵抗値が大きく、しかも中波帯域では表皮効果の影響も受けるため放射効率の面で不利なことが予測できます。



参考資料

NDXC名古屋DXersサークル - 中波用フェライトバーアンテナの製作

2012年1月29日日曜日

中波受信用ループアンテナ その12(使用材料・大きさ・巻数と受信電力の関係)

ループアンテナの出力電力

受信アンテナの大きさや巻数の検討のため、ループアンテナの出力電力を計算してみます。マッチング回路の使用を前提に、ループアンテナの抵抗分のみに着目した等価回路は次の通りです。


アンテナの誘起電圧Voは、電界強度と実効高で計算できます。但し、アンテナ誘起電圧Vo [V]、電界強度E [V/m]、実効高h [m]、ループアンテナ面積A [㎡]、ループ巻数N [回]、。


負荷電力Pは、ループアンテナの巻数や形状で決まる比例定数を仮にk とおくと次の通りとなります。このkが大きいほど大きな受信電力を取り出すことができます。



ここで、円形断面の電線を使ったときの比例定数k は次の通りです。ただし、波長λ [m]、ループアンテナ直径D [㎡]、ループアンテナ巻数N [回]、電線の直径Dw [m]、抵抗率ρ[Ω・m]。


次に、平板導体の場合です。ただし、波長λ [m]、ループアンテナ直径D [㎡]、ループアンテナ巻数N [回]、平板導体の厚みt [m]、平板導体の幅W [m]、抵抗率ρ[Ω・m]。


上式により、ループアンテナの使用材料や大きさを変えたときの受信電力を簡易予測できます。例えば、太い電線で少ない巻き数とした場合と細い電線で巻き数を重ねる場合でどのような差が出るか判断できるので、機構設計で便利に使えるかと思っています。
(注)検算しましたが、考え方が合っているかどうか検証してませんので、ご注意ください。

※2012.2.12 数式を変形して掲載

2012年1月21日土曜日

中波受信用ループアンテナ その11(ケーブルの表皮効果)

先に試作したループアンテナでは、放射抵抗と比べ損失抵抗が大幅に大きいことから放射効率が著しく小さくなっていることがわかりました。中波受信用ループアンテナの損失抵抗は、ループエレメントの表皮効果の影響が大きいとのことで、表皮効果について考えます。


表皮効果
表皮効果は、導体に交流電流を流すとき、周波数が高くなるほど中心部には電流が流れにくく、導体表面に近いところに集中して電流が流れるようになる現象です。
導体の抵抗値は次式の通りですので、表皮効果により導体の実質的な断面積が減少すると、抵抗値が増加します。


但し、抵抗値R [Ω]、抵抗率ρ[Ω・m]、導体の長さL [m]、導体の断面積S [㎡]

また、導体を流れる電流密度は導体表面から深い位置ほど指数関数的に小さくなります。表皮効果によって表面電流の1/e(約0.37)となる深さdは次の通り。


但し、表皮深さd [m]、抵抗率ρ[Ω・m]、交流の角速度ω [rad/s]、導体の透磁率μ [H/m]

この表皮深さを計算してみました。この表によると、音声帯域はもちろん商用電源の周波数でも表皮効果の影響を受けますし、中波放送帯では0.1mm以下と導体表面にしか電流が流れていないことがわかります。


表皮効果は、電線の他にもシールドケースの設計でも考慮されるそうです。低い周波数で効果を持たせるには、表皮深さを考慮した厚いシールドケースが必要になるとのこと。また、高周波コネクタの銀メッキも表皮効果を軽減させる目的で抵抗率が低い銀を高周波電流が流れやすい導体表面に使うそうです。


表皮効果による抵抗値
久しぶりに積分の計算にチャレンジしてみましたが、変な結果が出て手も足もでませんでした。仕方ないので先人の簡易計算例を参考にしてみます。まずは円形断面の電線(D ≫ d(表皮深さ)のとき)の場合です。


但し、表皮効果による抵抗R [Ω]、電線の長さ l [m]、電線の直径Dw [m]、周波数f [Hz]、 導体の透磁率μ [H/m] 、抵抗率ρ[Ω・m]、波長λ [m]

次に、平板導体(t, W ≫ d(表皮深さ)のとき)の場合です。


但し、表皮効果による抵抗R [Ω]、平板導体の長さ l [m]、平板導体の厚みt [m]、平板導体の幅W [m]、周波数f [Hz]、 導体の透磁率μ [H/m] 、抵抗率ρ[Ω・m] 


計算例

(1)円形断面の電線
グラフにしてみました。導体外径が小さいところで500kHz~1MHzの抵抗値が直流抵抗より低くなっているのは、表皮深さと導体外径が近づき概略計算式の近似条件が満たせなくなったためと思われます。このような領域では、DCでの抵抗値に収斂していくはずです。




(注1)メーカーカタログ値
(注2)円形断面とみなしたときの計算。実際はより線なので正確ではありません。



(2)平板導体
高周波用機器で配線のために電線ではなく銅板を使う場合があります。また、短波受信用ループアンテナのエレメントとしてアルミ製フラットバーを使う例もありますので計算してみました。





参考資料

スタック電子 - 表皮効果(Skin Effect)
三度の飯とエレクトロン - 表皮効果
・山田吉英(2011) 小型アンテナの特性と設計に使う基本式 RFワールドNo.14, 18-21

2012年1月17日火曜日

中波受信用ループアンテナ その10(浮遊容量)

浮遊容量

4種類の線材で作ったループアンテナの自己共振周波数から浮遊容量を計算してみました。


まず、自己共振周波数はいずれも10MHz以上とAMラジオ受信用としては問題ありませんが、巻数を増やしたときには問題に直面しそうです。帯域内のインピーダンス変化をなだらかとするためには、(私の感覚としては)自己共振周波数は低くても4~5MHz以上にしたいところです。

インダクタンスと自己共振周波数の実測値から浮遊容量を計算することはできましたが、浮遊容量を正確に計算で求めるのは難しいそうです。このループアンテナでは、線材を密着させて2回巻いています。ループアンテナの形状から考えると、隣り合う線材間に発生する静電容量がいちばん影響を与えているような気がします。そこで線材間の間隔をあけて静電容量を減らせば結果的に浮遊容量も減るだろうと考えました。

線材間の静電容量ということで、平行2線ケーブルの静電容量の計算式をさがしてみたところWebで計算例がありました。

但し、2本の電線間の1mあたりの静電容量 C[F/m]、誘電率ε[F/m](真空中の誘電率は8.854×10^-12)、log e≒0.4343、電線の半径 r[m]、電線間の距離 d[m]

上式から、電線間の静電容量を計算したのが次の表です。電線間の静電容量と浮遊容量の関係はリニアではありませんが、傾向としては比例関係にあるので当たらずとも遠からずといったところでしょうか。なお、誘電率は真空中のものとしており比誘電率は考慮していません。


次に、電線間の距離を変えた場合の静電容量の変化をグラフ化してみます。
グラフ横軸の電線間隔は、電線の太さDで正規化したもので電線間隔=2は、電線間隔が電線太さの2倍を示しています。縦軸は静電容量で、電線間隔=2のときの静電容量で正規化しています。


グラフからは、電線を密着させた場合と比較して、少し離隔を取ってやるだけで大幅に電線間の静電容量を低減できることがわかります。また、今回のテストでは、比誘電率が大きいPVC被覆電線を密着して配置したことも浮遊容量増に影響を与えていたのではと推測しています。


参考資料

電気柵 - 電気柵の静電容量の計算と考察

2012年1月15日日曜日

中波受信用ループアンテナ その9(インダクタンス)

ループアンテナのインダクタンスについて調べてみました。インダクタンスが大きいと自己共振点が低くなったり、Qが高くなってアンテナとして使うときに不便になりそうです。


インダクタンス(長岡係数)

ループアンテナは空芯ソレノイドコイルそのものなので次式で計算できます。

但し、インダクタンスL [H]、長岡係数K、透磁率μ=4π×10^-7[H/m]、ループアンテナの断面積A [㎡]、ループアンテナの厚み l [m]、ループアンテナの巻数N [回]

長岡係数は、あらかじめ用意された係数表を参照する場合が多いようですが、ループアンテナはソレノイドコイルとしては短い(厚みが薄い)ため探した範囲では係数表の掲載範囲外になっていました。長岡係数を算出するには、完全楕円積分という特殊な数式を使わなくてはならないのですが、なんとこれを計算してくれるWebページもあります。

ke!san - 長岡係数の計算 ・・・ 長岡係数を高精度に計算 ※L=コイル長さ=ループアンテナの厚み
IN3OTD's web siteSingle-layer Coil Inductance and Q ・・・ インダクタンスを計算してくれます



インダクタンス実測


4種類の線材でループアンテナを作ってみました。

(1) 600V IV ビニル絶縁電線 単線 導体径1.6mm
(2) 600V IV ビニル絶縁電線(いわゆるアース線) より線 公称断面積2m㎡
(3) カナレ電気 75Ωカラー同軸ケーブルL-3C2VS ※外皮(外部導体)のみを使用
(4) マスプロ BS用低損失75Ω同軸ケーブルS5CFV ※外皮(外部導体)のみを使用





インダクタンスの実測値は計算値より10%弱小さめとなりました。計算式を見ても明らかですが、インダクタンスは直径と厚み(長さ)で決まり、使用する線材の太さには影響を受けないのは意外でした。