(1)移動平均型LPF
プリエンファシス回路は抵抗とコンデンサの組み合わせで実現できているわけですから、これをデジタル処理するにはIIRフィルタで実現できるんだろう、と想像はできますが何をどうすればよいのかまったくわかりません。とっかかりがなく途方に暮れているとき、師匠(勝手にそう呼ばせて頂いてます)から『「移動平均型」のフィルタでサンプリング周波数がある程度高ければ、CRの1次の特性、50μsとか75μsのカーブにうまく合います。』というコメントとともに資料が届きました。
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移動平均型LPF(1)
ブロック図。IIRフィルタそのものです。
Z-1は1サンプル遅延を示しています。
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移動平均型LPF(2)
伝達関数
(2)移動平均型HPF
『LPFの出力と入力の差をフィルタの出力とすれば、LPFの通過帯域を遮断域とするHPFとなる』。明快な説明です。妙に納得しました。
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移動平均型HPF(1)
ブロック図
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移動平均型HPF(2)
伝達関数
(3)移動平均型LPF, HPFの周波数特性
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周波数特性
たしかに、HPFの遮断域のカーブは、プリエンファシスのカーブにもよく似ています。しかし、音声の中~低域の周波数はHPFの遮断域真っ直中。カットされてしまいます。そこで、図のように加える入力のレベルにゲタを履かせ、わずかに持ち上げてやればプリエンファシス・カーブに近づきそうに思えます。
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移動平均型HPF(3)
加える入力を持ち上げてみる "b"
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移動平均型HPF(4)
伝達関数は当然 "b" を重ね合わせたものになります
次に、このフィルタの周波数特性を調べてみます。参考書(古い本ですが、比較的わかりやすいように思えます。)によると、周波数応答はシステムを表す伝達関数の z に
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そして、下式を用いてH(ω)の実部と虚部を求め、H(ω)の絶対値を計算するそうです。
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先ほどの式に、これを代入してみます。
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ωは、角周波数で周波数[Hz]に2πを掛けたもの。Tはサンプリング周期[sec]です。この式を変形してゆき、実部と虚部に分けてH(ω)の絶対値を取れば、周波数毎の振幅特性を計算できます。
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